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永遠と幻想(師匠・ムリヤリ系?)

師匠が得体の知れない倒錯した世界に囚われるお話。
師匠はまだ若いのに、何故かキノさんも出てきます。
夢とも現とも分からない雰囲気を出したかったんですが、果たして出来栄えはいかがなものでしょうか?






熱い泥の中に沈んでいく。そんな感覚に包まれている。
逃げられるとも思っていないし、逃げるつもりもない。ここが、この場所こそが、やっと見つけた安息の地なのだから。

その部屋にいたのは二人の女性だった。
むき出しのコンクリートの壁に囲まれ、裸電球の黄色い光に照らされて、ベッドの上の二人の女性は裸のまま、お互いの肌を、手足を絡ませて激しく交わっていた。
二人のうち片方は、長く艶やかな黒髪の妙齢の女性。もう一人は、こちらはまだ少女といっていい年頃の、短い黒髪の女の子。
長い黒髪の女性はベッドの上に四つん這いになり、彼女よりも随分幼い体つきの女の子に後ろから肉棒を突き入れられ、はしたなく声を上げていた。
「…っあぁ!…ひぅうううっ!?…キノぉ!!!…もっと!!もっと突いてくださひぃ!!!!」
それはおよそ現実にはありえない光景だった。キノと呼ばれた少女の股間には、じゅくじゅくと濡れた女性器とともに、まぎれもない男性の肉の棒が屹立していた。
並みの男性のモノより大きくさえ見えるソレで、キノは女性の濡れそぼった秘部を犯し、夢中になって腰を振っていた。
「…ひあっ!…はっ…ししょ…ししょぉおおっ!!!ししょうのなかぁ、あつすぎゆのぉっ!ボクの、とろけひゃうぅうううっ!!!」
歓喜の表情を浮かべ腰を振り続けるキノの瞳に、もはや理性の色はない。キノに犯される女性も同様だった。
キノは組み付いた背中から女性の乳房を揉みしだき、首筋や耳たぶに一心不乱に吸い付き、ねぶり、女性の体を味わった。
女性はキノの与える快感に見も心も溶かされきって、涙や涎でグズグズに汚れた顔に悩ましげな表情を浮かべ、嬌声を上げ続ける。
何日か?何週間か?何ヶ月か?……それとも何年か?
肉欲に溺れ、快楽に脳髄を溶かされた彼女たちにとって、時間の経過はたいした意味を持たなかった。
ただ目の前の狂おしい熱の中で、迸る快楽を貪り続けるだけ。
「…ふあああっ!!も…らめぇ…ししょうのなかぁ…また…らひちゃうぅうううううううっ!!!!」
叫び声を上げ、背中を仰け反らせて、キノは己の欲望を女性の中へと吐き出した。通常を遥かに超えた量の白濁が、女性の膣内で暴れまわる。
「…はぁああっ!!?また出されてるっ!?…また…熱いのいっぱい…出されてるぅっ!!!」
ビュクッ!!ビュクッ!!!と、音を立てて吐き出される白濁の感触に、女性は身震いして何度も絶頂に達した。
肉棒を抜かれ、女性が脱力した体をベッドに横たえると、彼女の胸にキノが縋り付いてくる。女性は何も言わず、キノの体を抱きしめる。
甘えたような表情のキノはやや強引にキスを求め、女性もそれに応じる。くちゅ、ぴちゃと音を立ててお互いの唇を味わい、舌を絡ませあう。
長い長いキスを終えて、唇を離したキノは、まるで子供のような表情を浮かべ、女性の胸で眠りに付いた。
そんなキノの頭を撫でながら、女性は思い出す。目の前の少女が、今の自分が絶対に出会うはずのない人物であることを。
キノは自分の将来の弟子。年老いて老婆となった自分が、旅の中で生きていく為の技術を教え込んだ少女。
彼女と出会うのは、まだ見ぬ未来での事のはず。
だがそれも、快感に痺れきった今の彼女の頭には、どうでもよい事に思えた。
未だ知ることの出来るはずのない未来の出来事を、どうして自分が知っているのかも、全てはどうでもいい事だ。
「………キノ、おやすみなさい…」
キノの耳元でそう囁いて、女性は瞳を閉じた。耳元で聞こえるキノの安らかな寝息を聞きながら、女性は本当に穏やかな心持だった。
何も問題などありはしない。
今、自分の傍らにこの少女がいる事、それだけが大切なことなのだ。抱き寄せた少女の確かなぬくもり以外、今は何も必要はない。
たとえ、腕の中の少女がいつか自分の元を離れて一人旅立つのだとしても、今の女性には関係のないことだった。

鎖が立てるジャラリという音に、女性の心は妙に浮き立った。
外に出る。散歩に行く。ただそれだけの事だというのに、逸る心を止められない。
「じゃ、師匠、いきましょうか」
後ろから声を掛けられる。振り返った女性の視線の先には、彼女の旅の相棒であるハンサムで少し背の低い男。彼が手に持った鎖は、女性の首元へと繋がっている。
鎖。首輪。口を塞ぐギャグ・ボール。後ろに回された手には銀色に光る手錠。股間でうなりを上げるバイブレーター。
ブーツ以外は何も身につけていない女性の裸身を、それらの道具が縛り付けている。その圧倒的な安心感の中で、女性は恍惚としていた。
腕を使えない女性の代わりに、男が先頭に立ちドアを開く。その背中を追いかけて、女性は外の光の中に出て行った。
どことも知れない街。のっぺりとして特徴のない建物が立ち並び、どこまでもまっすぐな道が続く。晴れ渡った空の下、道行く人々の顔はみな笑顔。
幸せそうな人々の視線を浴びながら、女性は男の後ろを歩いていく。
腕を封じられ、バイブの振動に体を震わせる女性の足取りはフラフラと安定しない。男は急ぎすぎないよう、倒れたときにはすぐに助けられる位置をキープして歩く。
「だいぶ暑くなってきましたね、師匠。こりゃあ、本格的な夏が来たらどうなることやら……」
そんな事を言いながら振り返った男の笑顔に、女性は視線だけで答える。
それだけで十分に言いたい事は伝わる。ギャグ・ボールを噛まされて喋れなくても、気持ちは通じる。
なにしろ、結構長い付き合いなのだ。
とある国でめぐりあったこの男と、女性は幾つもの国を巡ってきた。
相棒としての彼の腕前に女性はそれなりに満足していたし、なにかとトラブルの絶えない女性との旅を男も楽しんでいるようだった。
良いコンビ、そう言ってもいいのかもしれない。だが、今の女性は知っている。二人の旅もいつか終わりが来る事を。
遠い未来、女性も男もそれぞれ一人きりで生きる事になる。
女性の知らないどこかの国で暮らす男の命は、飲まれて、溶けて、流れて、最後には消えてしまう。それでお終い。気持ちいいぐらいに何も残らない。
だけど、今は違う。その時ではないのだ。
「…んっ……んぅ………ふ…うん…んん―――――っ!!!!!」
バイブの振動に身悶え、口に噛まされたギャグの為に叫ぶ事も出来ず、鎖に引かれるままに女性は街の中を歩いていく。
突き刺さる人々の視線が、そのまま快感に変換される。公衆の面前に淫らな姿を晒し、全てのプライドを捨て去って、女性の心はどこまでも満たされていた。
これまで築いて来た自分の全てがグズグズと崩れ去り、快楽だけを考える肉の塊へと堕ちていく。他の事など何も考えられない。考える必要などない。
自分の全てを、鎖を握る彼に委ねて、女性の心は快楽の海へと溶けていく。
「うわ~、もうこんなにビチョビチョだ。師匠、よっぽど感じているんですね」
言いながら男は、女性の乳房や、しずくの流れ落ちる股の内側、首筋や鎖骨、お尻に太ももと、体中のあらゆる場所を触ってくる。
触られた場所にゾクゾクと切ない刺激が走って、体の奥がキューッと熱くなる。自分で触って慰めたくても、封じられた腕ではそれも叶わない。
死にそうなくらいにもどかしい。バイブの振動は女性を満足させるには単調すぎる。もっと深く、滅茶苦茶に、アソコをえぐって、突き上げられたい。
もう歩く事なんて出来ない。燃え上がる体を押さえ切れず、女性は道端に膝をついた。
「…んっ…んん――――っ!!!んうぅ……ふぅんっ!…んうぅうううっ!!!」
長い髪を振り乱し、道の真ん中で快楽に喘ぐ女性。男はその傍らに膝をついて、巧みに指を使い、女性の体を絶頂へと導いていく。
気持ち良い事、それしか考えられない。自分の全てを投げ出して、全て彼に委ねて、彼の腕の中で快楽に踊るだけ。
ああ、なんて幸せなのだろう。
「ほら、師匠。思う存分叫んでください。」
男の手が女性の口にはめられたギャグ・ボールを外す。涎まみれのソレから解放されて、女性の口元に浮かんだのは恍惚の笑み。
男がバイブを一気に奥へと押し込んで、膣を、子宮を突き上げられて、女性の頭の中で白い光がスパークした。
「ひっ…あぁああああっ!!!!イクぅうううっ!!!イきますぅううううっ!!!!」
白昼の街中に歓喜の声が木霊する。信じ難いほどの解放感に体を打ち震わせて、女性の体はその場に崩れ落ちた。

それからまた幾日が過ぎたのか………。
部屋の中で、外で、相棒の男とキノは代わる代わるに女性を犯した。女性は幾度となく絶頂を味わい、白濁を注ぎ込まれた。
犯されて、喘いで、貫かれて、突き上げられて、腰を振って、ただそれだけを延々と繰り返す。時間の感覚はさらに曖昧になって、心はさらに混沌の中へと埋もれる。
今、女性は部屋の中、頼りない電球の灯りの下で、男とキノの二人から同時に愛撫を受けていた。
二人の与える快感に蕩けきった表情を浮かべて、女性は自分のぷっくらと膨らみ始めたお腹を撫でていた。そこに宿った命をいたわるように、優しく、優しく………。
「ふふ……どっちの子供なんでしょうね?」
女性にとってそれは目の前の二人との繋がり、その証のように思えた。いつか出会って、いつか離れていく二人、でも今はここにいる。自分のそばにいてくれる。
もしかしたら、ずっとここにいれば、二人と別れる事もないのかもしれない。この快楽の泥沼の中で、この二人と一緒にずっと漂っていられれば………。
そこまでで、女性の思考は遮られた。
「…ん…ふぅ……キノ…んっ…」
キノに唇を塞がれ、舌を嬲られて、女性は悩ましげな声を漏らす。頭の芯が痺れて、思考が、理性が溶け出す。
真っ白になった頭の中で考える事はたったひとつ。もっと二人に触られて、くちゃくちゃにかき混ぜられて、どこまでも堕ちていきたい。
「ほら、師匠、きてください」
男に促されて、女性はベッドの上に座った彼の腰の上に跨る。男の腕に抱き締められて、彼の股間にそそり立つモノの上へ、ゆっくりと腰を下ろしていく。
じゅぷり、と音を立てて、熱く濡れた柔肉を押し割りながら、男の怒張が女性の体の奥へと侵入してくる。
「…は…ひぃいいっ…うあ…あ…すご……」
その様子を傍らで眺めていたキノは
「…あ…ししょ…ボクもいっしょに……」
女性の背中に抱きついて、自分のモノを後ろの穴に押し当てる。
「…あ…うしろぉ…だめ………ひぁあああああああっ!!!?」
女性が言い切るより早く、キノのモノが後の穴の奥へと押し込まれた。既に何度となく使われていたそこは、容易くソレを根元まで飲み込んでしまう。
前後の穴を焼ける肉の棒に貫かれる。その感触に震えながら、女性は男の体に必死にしがみついた。自分の体の内側で脈打つ存在感だけで、脳髄が蕩けてしまいそうだ。
「…師匠の中、すごく熱くてぬるぬるして、最高に気持ち良いですよ」
「…あ…は…ああっ…あなたのも…すごくあつくて…おおきくて……」
「師匠も気持ち良さそうで、俺も嬉しいですよ」
「……うごいて…かきまぜて……わたしのことぐちゃぐちゃに…してくらさいぃ……」
「…………はい」
こっくりと肯いて、男は腰を動かし始める。同時に後のキノも動き始めて、女性の体は前後からかき混ぜられる事となる。
二本の怒張は女性の膣内で圧迫し合って、内側の柔肉をこそげ落とさんばかりの勢いで暴れ回る。
まるで嵐の中に放り出された小舟の様に、女性の体は二人の動きに翻弄された。後ろの穴を突き上げられて悲鳴を上げ、前の穴を貫かれて背中を仰け反らせる。
「…う…はあああっ!!…きも…い…すご……きもちいひいいいっ!!!!」
前も後も快感で満たされて、とっくに脈絡を無くしていた女性の言葉から、さらに知性の色が抜けていく。
快楽のしもべ、欲望に従順な肉の塊、盛りのついた獣、女性の心は、体は、彼女自身の望んだものへと変えられていく。
「…ああっ!!…や…ひああああっ!!!?…わたしのなか…とけひゃうのぉおおっ!!」
あられもなく叫ぶ女性の姿を見ながら
「…うあ……ししょう…かわい……」
ウットリと囁くキノの声
「…くぅ、師匠がこんなにエッチだったなんて知りませんでしたよ」
満足げに笑いながら、男が言った言葉。
それらの一つ一つが、まるで媚薬のように女性の神経を昂ぶらせ、さらなる快楽の境地へと連れて行く。
空っぽになった頭の中を快楽だけで満たされて、女性は今、心の底から幸せだった。
快楽の底なし沼に深く深く沈んでいく。そして、この二人と一緒に自分は溶けて、そうすればもう自分を脅かすものは何も無い筈だ。
溶けて、崩れて、絡み合って、誰にも分かつ事ができなくなるまで、この二人と交わり続けよう。
「…ひあっ…あ…ふたりともぉ……もっと…もっとついてくらさい……どろどろに…おかして…わたひを…ダメにしてくらさいぃいいっ!!!!」
そう叫んだ女性の言葉に応える様に、前後の二人はペースを速める。より強く、より速く腰を動かし、女性の中を攪拌する。
その度に駆け抜ける快感の大きさ、激しさ。女性は何度も背中を仰け反らせ、歓喜の声を上げた。
下腹部に宿り続けた熱はその密度を増していく。そして、それはついに、激しさを増す男とキノの突き上げの前で限界に達した。
「ふあっ!!ああああっ!!イクぅっ!!…わらひ…も…イっひゃうのぉおおおおおっ!!!!」
絶頂に達した女性の体がビクビクと痙攣する。同時に前後で放たれた白濁が、女性の体の中をたまらない熱で満たしていく。
「……ああっ…あついの……いっぱい……」
満たされて、汚されて、女性の顔には至福の表情が浮かんでいた。
このままずっと、二人と一緒に、誰も触れることの出来ない沼の底で過ごそう。気持ち良い事だけの世界で、永遠に、どこまでも………。
この上ない安心感の中、女性は穏やかに瞼を閉じた。

そして、あまりにも呆気なく夢は終わりを告げた。

最初に目に入ったのは、夢の中でも散々目にした人物の顔だった。
「師匠、気が付いたんですね?」
少し背の低い、ハンサムな男。女性の弟子。相棒。旅の道連れ。
「私は…一体……?」
男の手を借りて、女性は自分の横たわっていた金属の台の上に起き上がる。周りを見渡すと、暗い部屋の中は得体の知れない機械と、無数のコードで埋め尽くされている。
その内の何本かは女性に絡みつき、なにやら怪しげな機械を首筋やこめかみに押し付けていた。
そうだ、思い出した。偶然見つけた怪しげな遺跡。無人の建物の奥から飛び出したコードに絡め取られて、女性と男はその内部に運び込まれたのだ。
「俺も今、別の部屋で目を覚ましたばかりなんですけど、とにかくここはヤバイ。早く外に出ましょう」
段々と記憶が戻ってくる。ぼやけていた頭脳が、事態を理解し始める。
しかし、女性の心の一部はまだ夢の世界を引きずっていた。もはやどんな事があったのか、はっきり思い出す事は出来ないのに、心があの夢を求めているのだ。
「出る…逃げるんですか?」
「そうです。こんなとこ、いつまでも居られませんよ!!」
「でも、そうしたら、私は………」
あの世界は、ただただ快楽に満ちて、何も失う事はなく、誰と分かたれる事もない。
目の前の彼も、いつか出会う誰かさんも、ずっと一緒にいてくれる世界。
だけど、夢は夢のまま砕け散った。現実に引き戻された女性は、どうあがいたって、いつかは必ずひとりぼっち。
その時突然、呆然とする女性の前で機械の一つが作動し始める。
「な、何だ!?」
機械の上部から溢れた光が、像を結ぶ。白いヒゲの老人の立体映像が忽然と姿を現した。老人は二人を一瞥して口を開く。
「×××××、××××××××××。×××××………」
遥か昔に失われた言葉。文明の残滓。女性にも、男にも理解できない言語だった。
意味不明の言葉を使い、二人に語りかける老人の口調は穏やかだった。だが、女性は気付いていた。穏やかさの裏に見え隠れする黒い感情を……。
「……優越感?…私たちを、見下している?」
整った笑顔のほんの端っこが、小さく歪んで見えた。瞳は下卑た好奇心に満ちていた。遺跡が、この機械装置が女性に何を見せたのか、全てを知った上で男は話している。
やがて歪んだ笑顔は顔全体に広がり、堪え切れないとでも言うように、男は笑い始める。
「ヴァハ、ヴぁヴぁヴぁヴぁっ!!!ヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁっ!!!!」
口を大きく開け、男は笑う。腹を抱え、笑い過ぎの涙を手の甲で拭い、笑い声を部屋中に響き渡らせる。
「悪趣味、ですね………」
女性はパースエイダーを引き抜き、立体映像装置に向かって構える。喉の奥から湧き上がる叫びを抑え込みながら、引き金を引く。
次々と放たれる銃弾は、装置にめり込み、その外装を砕いて内部を破壊する。火花が飛び散り、黒煙が吹き上がる。それでも、歪む立体映像の中で老人は笑っていた。
「ヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁ…ヴぁ…………ヴぁっ……」
やがて装置が完全に停止した後も、その笑いは部屋の中を埋め尽くす機械の狭間に響き続けた。
全ては彼の遊び、だったのだろう。
人の心の隙間に潜り込み、その願望を歪んだ悪夢に仕立て上げる。それに惑い、揺れる人の心を嘲笑う為だけに作られた悪趣味な機械。
途方もない技術と知恵を、ただ人を苦しめるためにつぎ込んだ最悪の悪戯。
「……………」
金属の台の上に腰掛けて、全弾を打ち尽くしたパースエイダーを握ったまま、女性は俯いていた。今の自分の顔を、相棒に見られたくはなかった。
出会って、別れて、死んでいく。
それは誰もが常に心のどこかで恐れている事。世界中のどんな人間も、それについて相応の覚悟をして、時に耐え、時にやり過ごし、その一生を乗り切っていく。
それは、女性にとっても同じ事だった。
ありふれた当たり前の悩み。いまさら抉り出されたところで、どうって事はない。その筈だった………。
「………師匠」
心配そうに男が呟いた。それでもガタガタと震え続ける体を止められなかった。立ち上がる力が湧いてこなかった。
別離の悲しみ、そこからの解放という甘い蜜をちらつかせ、最後にその幻想を砕いて見せた。全く、単純ながらも良く出来ている。見事と言うほかない。
ありふれているからこそ、根も深い。与える傷も深い。
当たり前だ。最初から解っている。
「こわい………私だって、こわい……」
床にパースエイダーを落とし、両の手の平で顔を覆い、女性はそれだけ、やっと吐き出した。
ふと顔を上げる。目に入るのは男の笑顔。いつもより幾分か憔悴した様子を見せながら、それでも男は微笑んでいた。
「そろそろ行きましょう、師匠」
そっと差し伸べられた手に、心の奥で女性は怯えた。ここで握っり合った手の平も、いつかほどけて、離れて、消える。もう二度と、出会うことはない。
沈黙が、二人の間を流れていく。呆然と自分の手の平を見詰め続ける女性を、何も言わずに男は待ち続けた。
男の指先も震えていた。その胸の奥にあるのは女性と同じ恐怖なのかもしれない。
それでも、どうせいつかは彼の前から消える彼女に、男はずっと手の平を差し出していた。それ以外に、自分の意思を示す方法を、男は持たなかった。
やがて震えたままの女性の手の平が、ゆっくりと男の手に重ねられて
「そうですね、行きましょう」
いつかは消えて無くなるその手の平を、女性はしっかりと握り締めた。

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