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女体化シズさんがキノさんを圧倒する話(キノの旅・ネタ系)

シズ様女体化注意です。
何が何を圧倒するかというと、つまりペッタンコなキノさんが……
まあ、これ以上は本編で語る事としましょう。







とある国、時刻が遅くなるほどに賑わいを増していく夜の街、その一角に一軒のバーが店を構えていた。
店内に入ると、カウンターには体格の良い、いかにも恐ろしげなマスターが一人。
マスターの顔の左半分には大きな傷が縦に走り、並みの人間なら一瞥されただけで動けなくなってしまいそうだ。
だが、その表情にはなにやら今は困惑の色が浮かんでいるようだった。その原因はマスターの真向かいで、カウンターにうずくまっている一人の客だ。
そこそこ客も入って賑わう店内でただ一人、どんよりとした表情でただ一人酒を飲み続けているその客、それだけならありふれたたちの悪い酔っ払いなのだが………。
「キノさん、これ以上は体に毒です。いい加減にしたらどうです?」
「ば~ろ~!!ボクはおきゃくさんらぞぉ。もんくいわずにさっさと酒をだせぇ~」
問題の酔っ払い、旅人のキノは、どう見たって10代の半ば、まだ子供と言ってもいいような年頃だった。
しかも、来店してから延々と撒き散らし続けている愚痴の内容から判断するに、どうもこの子は女の子であるらしい。
使い古されたコートを身にまとい、髪もそれほどのばしていない男性のような格好。
華奢な体はしているが、女性らしい柔らかな膨らみがまったく見られないプロポーションなので、一目見ただけでは成長途上の少年のように見える。
しかし、彼女はれっきとした女の子で、そんな娘が夜の酒場で浴びるように酒を飲みながらくだを巻いているとくれば、誰でも対応に困ってしまうというものだ。
長い間このバーを切り盛りしてきたマスターにとっても、こんな客を扱うのは初めてのことだった。
「うぃ~~~、ほんとのまなきゃやってられないってのぉ~」
グラスの中を再び満たした琥珀色を一気に流し込むと、既に真っ赤であったキノの顔がさらに赤味を増していく。
どこで飲んできたのかは知らないが、この店にやって来たときには、キノは既に相当酔っ払っていた。
こんな娘一人を追い出すわけにもいかず、他の客に絡まれないように気を配りながら、マスターは一人でキノの相手をした。
この年で旅をしており、かなりしっかりした少女であるらしいキノが、どうしてこんな無茶苦茶な飲み方をしているのか。
酒を飲む合間に呂律の回らぬ舌で喋り続けた内容を整理すると、おおよそこういう事らしい。

入国審査を終えて城壁の中へと入ったキノは、町の雑踏の中に見覚えのある人物を見つけて駆け寄った。
自分たちが定住できる国を探して旅をしている青年シズ、すらりと高い身長と腰に下げた独特な刀、傍らにはティーと愛犬の陸もいる。
間違いないあの人だ。
しかし、キノは奇妙な違和感を感じていた。あの後姿から感じる雰囲気は確かにシズのものなのに、何かが違う気がする。
身に付けているものも同じ、髪型だって前と変わらない。それなのに、何かが致命的なほどに変化している。
「シズさんっ!」
キノが呼びかけると、シズはゆっくりと振り返り、見覚えのある顔が目に入った。
何だ。やっぱりシズさんじゃないか。人違いなんかじゃなかった。
しかし、完全にキノの方を向いたシズの全身に目をやったとき、キノの笑顔が凍りついた。
「えっ!?…………シズさん?」
「…………や、やあ、キノさん」
申し訳無さそうにうつむくシズの前で、キノは何度も目を擦る。眼前の光景はあまりに信じ難く、言葉に表せないほどの驚愕にキノの思考回路が一瞬停止する。
「えっと、驚かせたみたいだな。なんていうか、その、妙な事になってしまって………」
以前に二人が会ってからそれほどの時間は経っていないはずだ。だが、僅かばかりの時間の経過がシズにもたらした変化は、あまりにも凄まじいものだった。
今、キノの目の前に立っているシズの体。かつて分厚く鍛えられていた胸板の代わりに、堂々と鎮座するのはそれぞれがメロン大の丸い膨らみ。
そこから視点を下に移すと、腰に至るラインは曲線を描いて細くくびれ、肉感も豊かなヒップが目に入る。
再びシズの顔に目をやる。確かにシズだと識別できる顔つき、だがそれは以前より丸みを帯び、繊細な美しさを持ったものに変わっていた。
「キノさん、今の私は………女なんだ」

女体化病。
一般にそのように呼称される奇病がこの国には存在した。文字通り、人間の性別を180度転換させてしまう恐るべき病。
幾人もの研究者がこの病気について研究してきたが、その原因はいまだ全く持って不明の状態である。
ただ、放置しておけば1,2週間でもとの性別に戻る事が出来るため、この国の人々は嫌々ながらも女体化病を受け入れてきた。
「ともかく衛生上の問題からも、完治するまでこの国から出てはいけない事になっているんだ」
突然に襲いかかった災難、女体化病についてのシズの説明を、キノは遠い目をして聞いていた。
どうやらオカマなんぞになったわけではない事がわかってキノは安心したが、シズの部屋に呼ばれて話を聞いている内に別の不安がキノを襲い始めていた。
(今のシズさんって…………)
キノが虚ろな目つきで眺めているのは、シズの緑のセーターをぱんぱんに膨らませて、その威容を誇示している二つの物体。
いい加減、もう年頃のはずのキノが持っていないソレ。
(………すごい巨乳だ)
男性としての体格の良さが、すべて女性としてのプロポーションに変換されているようだ。
出るところは出て、引っ込むところは引っ込んだ理想的なボディ。手に触れなくても、服の上から見るだけでも、その柔らかな感触が伝わってくるようである。
声は以前の印象を確かに残しながらも、まるでどこかの歌い手のような耳に心地よい、女性の声に変わっている。
さらに顔だって、もともとの端正な顔つきを反映して、長らく色々な国を巡ってきたキノでも目にしたことの無いような美人になっている。
振り返って自分の体を見てみると、胸から腰へとストーンと一直線に繋がるライン、女というより女の子といった方がしっくりくる顔つき。
はっきり言って完敗である。本当は男性であるはずのシズに、正真正銘の女性である筈のキノが手も足も出ない。
如何ともしがたい敗北感に、キノの口数はめっきり少なくなっていた。
いつものキノならば、この程度の事はいくらも気にしないのだろう。人は人、自分は自分と割り切る事が出来るだろう。
だが、今のキノの目の前にある異常事態は、それを許さない。相手がもともと男性である事が、キノに必要以上に自分の中の女性を意識させていた。
その上、シズはキノのそんな内心の気持ちにはお構いなしで、嬉しそうに笑い、話し掛けてくる。
この気持ちをわかれと言う方が無理なのだろう。
キノと再会できた嬉しさもあるだろう。
必ず直ると言われているとはいえ、聞いた事も無い奇病にかかり、自らの根本をなす要素である性別が変わってしまった不安もあるはずだ。
シズには悪意は一欠けらも無い。
必死に自分にそう言い聞かせても、シズが一つ動作を起こすごとに揺れる胸を見ていると、キノの心の奥底に何とも言えない苛立ちがつのっていく。
「キノさん、お茶のおかわりはどうです?」
「…………えっ、あっ、はい。お願いします」
人間にとって、女性にとって、真に必要なのは外見などではないと自分を励ましてボーっとしていたキノに、シズが話し掛ける。
慌てて持っていたカップを差し出すと、シズはティーポットを持ってお茶を注ぎ入れる。
再びポットをテーブルに戻そうとしたとき、前屈みになったシズの大きな胸が釣鐘のように揺れる。
たゆん。
キノには確かにそう聞こえた。シズが動いた瞬間、その勢いで左右に揺れた膨らみが、まるで中に甘い蜜でも詰めているかのような音を立てた。
(…………人間の出せる擬音じゃないっ!!!)
我が耳を疑うような悪魔の音色がキノのハートにクリティカルヒットする。
シズの一挙一動を見ているだけで、まるで魂をドリルで削られていくような心持ちだ。
「どうしたんだい、キノさん?顔が青いぞ」
「ほんとだ。そういえば、さっきからあんまり喋ってないし。大丈夫なの、キノ?」
キノを心から心配しての、シズとキノの相棒のモトラド、エルメスの言葉。それだけに余計に腹が立つ。
(……ボクの気持ちも知らないでっ……!!!)
ティーカップの中身をぶちまけてやりたい気分をギリギリの所で抑え付け、キノは力ない笑顔を浮かべる。
「……いえ、大丈夫ですよ。ただこの国に来るまでに結構疲れちゃったので」
ここが一番の踏ん張りどころだ。ここでキレてしまっては、それこそ女性らしさのかけらだって自分の中にはない事になってしまう。
疲れているのも一応は事実だし、ここはさっさと自分の部屋に引き上げて、シャワーでも浴びて眠ってしまうのが一番だ。
「そうか……なら、無理に引き止めてしまうのは悪いな」
よし、良い流れだぞ。
もう少しでこの耐えがたい苦痛から解放される。自由になれる。
「……すみません。ボクも出来ればもっと長く話したかったんですが……」
その馬鹿みたいな胸さえなければね、と心の中で付け加えてキノは立ち上がる。
同じく立ち上がったシズの胸がまたも大きく揺れて、たゆん。とキノの鼓膜に向け強力な一撃を放つが、これも何とか堪える。
(今日は日が悪かった。シズさんが男に戻るまで待つ事も出来ないだろうけど、せめて明日になれば、もう少し落ち着いて話せるはず……)
ふらつく足に力を込めて、キノはなんとか一歩を踏み出す。エルメスのハンドルに手をかけ、キノはシズのほうに振り返った。
だが、そこにはキノを襲う最大最悪の罠が待ち構えていた。
「…………シズさん?」
「ん、なんだいキノさん?」
「……………………何してるんですか?」
それ一見してどうという事もない動作だった。
シズが自分の肩の方に手をやって、その肩凝りを揉み解している。
「いや、この体になってから妙に凝ってしまって、参ってるんだよ…………」
そう言って苦笑して見せたシズ、彼は自分が致命的な間違いを犯した事に気が付いていなかった。
シズを苦しめている肩凝りの原因、それは誰の目にも明らかだ。この場にそれを推理できない者はいないだろう。
圧倒的な質量を誇るシズの巨乳は、当然のことながらシズの肩に並々ならぬ重量を掛けることになる。その結果起こる猛烈な肩凝り。
それは、キノには絶対に起こりえない現象だった。
「……………当てつけですか」
「えっ!?」
間の抜けた声を出したシズ、その顔をキノは地獄の悪鬼のような目つきで睨みつけた。
わざとで言ったはずがない。当てつけなんかでは有り得ない。それはわかっている。わかっているのだが………。
「皮肉のつもりですか?」
「キノさん、何を言って?」
「そりゃあ、ボクには胸なんて無いに等しいですよ!!!でも、そんな遠まわしな嫌らしいやり方で文句を言われるような覚えはないですっ!!!!」
一度火がついた怒りは止め様が無かった。怒りの炎がキノを内側から焼き尽くすような勢いで燃え広がる。
今まで旅先で受けたどんな侮辱だってこれほどではなかった。
なんでよりにもよって、こんな男に、自分より弱いヘタレ剣士にこんな事を言われなければならないんだ。
「キノさん、落ち着くんだ」
差し伸べられたシズの手の平を思いっきりはたく。それでも縋ろうとするシズにキノは腹の底からの声で叫んだ。
「ボクの気にしてることをぉををををおおおををぉおおっ!!!!!!!!」
こんな腹立たしいヤツの部屋に、もう一秒だって居てやるものか。愕然とするシズを置いて、キノは脱兎のごとく廊下に飛び出した。
「シズさんのぉ馬鹿っ!!!バカっ!!ぶぁくわああああぁああああああああっ!!!!」
宿屋の内部どころか、外にいたって聞き取れそうな大声で叫んびながら、キノは廊下を駆けていく。
一人部屋に残されたシズは………
「どうしてキノさんをあんなに怒らせてしまったんだ?」
やっぱり、全く事情を呑みこめずにいた。

宿屋を飛び出したキノは、腹立ち紛れに慣れない酒に手を出して、ベロンベロンになるまで飲み続けた。
どうやって今いるバーに辿り着いたのか、キノ自身も覚えていない。
慣れない酒を浴びるように飲むほど、キノの胸を虚しさが締め付ける。何も知らないシズに当たって何になる?結局は自分ひとりが勝手に怒っているだけの話ではないか。
間接照明を反射して輝くグラス、そこに映る酔いつぶれた自分の顔はなんと情けないのだろう。
人は中身が全てで外見などどうでもいい、とまでは言えないにしても、自分ではどうすることもできない体の事を、これ以上思い悩んで何になるのか?
だが、もう一度自分の胸を見やるとため息が出てくるのを抑えられない。
「ボクはどうして……こんなムネちっちゃくて…」
もういい加減、お酒を飲むのも億劫になってきた。酔いは悩みを深めるだけで、一向にキノの助けになってくれそうもない。
キノはカウンターテーブルに上半身を預け、壁にかかった時計を見るとも無く眺める。もう夜も大分遅い。店内に既にキノ以外の客はいなくなっていた。
いつもなら横にいるはずのエルメスも宿屋に残してきてしまった。今のキノは正真正銘のひとりぼっち、孤独が身に染みてこのまま消えてしまいそうだ。
と、その時、キノの体の上にふわりと毛布がかけられた。
「……あれ?もーふだ」
「今更追い出すわけにもいきませんしね、サービスですよ」
毛布をかけてくれたのは困ったように微笑むマスターだった。
「あ、ありがとうございまふ……」
呂律の回らない舌でお礼を言って、毛布を自分の体にきゅっと巻きつけた。ふわふわと優しく暖かい感触に包まれて、キノの心持ちも幾分か和らいぐ。
その様子を見て満足そうな表情を浮かべたマスターは、キノの隣の席に腰掛けた。
「人の価値は外見なんかじゃないって言っても、余計に辛くなるだけなんでしょうね、今のキノさんには………」
こわもての外見とは裏腹な穏やかな言葉、優しい瞳に見つめられて、キノは素直に肯いた。
「その気持ち、わかりますよ」
マスターは苦笑いを浮かべながら、自分の顔の左半分に醜い爪痕を残す傷を指差した。
「これじゃあ、カタギには到底見えませんよね。本当は単に子供の頃、事故でつけただけの傷なのに………」
人間にとって一番肝心なのは内面の美しさである。これまでどれだけの人間が言ったかわからないこの言葉には一面では真実も含まれているのだろう。
ただ、他人が外見を見て下す判断は、往々にしてその人の内面まで引っ張ってしまうのも事実だ。
気にしてはいけないと思っても、どうしても気になる。
「その年頃では、どうしたって気になってしまいますよね。でも、知ってますか?キノさんはとてもきれいな顔をしてるんですよ」
「……ほんとですか?」
「ええ、本当です。自分の目で見ると、自分の中には欠点しかないように思いがちです。でも、本当はそうじゃないんです。それに……」
「それに?」
「自分が欠点だと思ってるところだって、本当にそうなのかはわからない」
マスターはそっと目を閉じ、何か遠い昔を懐かしむような表情を浮かべて、顔の傷を優しく撫でた。
「この傷を好きだと言ってくれる人だっていました」
マスターの瞼の内側には、そう言ってくれた『あの人』の笑顔がありありと浮かんでいた。その一言があっただけで、自分の気にしていたことが全てちっぽけなもののように思う事が出来た。
「根本的な解決になってないのはわかっています。でも、外見も内面も、全てで一番になるのはとても難しい。
自分のことを好きだといってくれる誰か一人のための一番ではいけませんか?キノさんにもいますよね、そういう人」
「えっ?ボクは………」
「話に出てきたシズさんという人のこと、随分気にしていたみたいですけど………」
「そんなことは………」
「比べる対象がその人だったからこそ、いつもなら気にならないことが気になったんじゃないんですか?」
完全に言葉を失ってしまったキノの頭を、マスターは優しく撫でる。
もしかしたら自分は最初から気がついていたのかもしれない。
と、その時………。
「すみませんっ!!こちらにキノさんという旅人は来てませんか?」
店の扉が開く音が響いて、夜の街の音とともに、聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「どうやら、キノさんはあの人にとっての一番だったようですね」
ずっと走り通しだったのだろう。荒く切れる呼吸にあわせて、肩が大きく上下して、体からは湯気が上がっている。
それでもその人は、シズは、店内に佇むキノの姿を認めると、その顔を嬉しそうにほころばせたのだった。

シズに背負われて宿屋の自分の部屋に辿り着いたときには、夜風にあてられたこともあって、キノの酔いは大分さめていた。
今日一日の自分の行動も客観的に見る事が出来る状態になっていたが、先程までの調子が抜け切らずに憎まれ口ばかりが出てしまう。
「シズさんみたいなへたれけんしに、おんならしさでまけるよーそなんてなんですよぉ、ボクはぁ~」
「はいはい」
「へんじはいちどでよろしい!」
「はいはい」
延々と文句を言いながら頭をポコポコ叩いてくるキノを、シズはそっとベッドに横たえてやる。そして自分もベッドの端の方に腰掛けた。
「今日はなんだか、気付かない内に失礼な事をしてしまったみたいだな。すまない、キノさん………」
「いーですよ、べつに。じじつじゃないですか………」
何で今の自分はこんな事しか言えないんだろう。いつもなら、こんなに自分を見失うような事はないのに。
そう思ってみても、目の前で心配そうに見つめてくるシズの、女性のものになった顔がどうにも憎らしくて、自分の事を顧みると余計に腹立たしくなってしまう。
「おんなのこらしさなんて、うまてたときに、おかーさんのおなかのなかにおいてきましたよーだ!!」
ベーっとシズに向けて舌を出して見せる。完全に子供の行動。しかしシズは、そのふくれっつらに困ったように微笑んで、キノの頭を優しく撫でた。
「じゃあ、キノさんには女性としての魅力なんて全くないと?」
「そーです!!そのとーりです!!」
「そうか、それなら………」
投げやりなキノの言葉を聞いて、シズの表情が急に真剣なものに変わる。唐突なその変化に、キノは一瞬息を飲む。
そうして何も言えなくなってしまったキノ、その唇にシズの唇がそっと重ねられた。
「……………うあ」
「………それなら、キノさんに魅力が無いというなら、どうして俺はこんなにキノさんのことが好きなんだろうな……」
女性の唇でされたキスは、なんだか甘い香りを含んでいるように、キノには感じられた。
シズの手の平がキノの頬にそっとそえられる。そこから伝わる感触を楽しみながら、シズの手の平が何度も往き来する。
「キノさんを見るだけで、なんだか無性に嬉しくなって、足取りが軽くなって………あれも嘘なのか?」
「そんな……その」
「素敵な女性だよ、キノさんは……」
それだけ言い終えたキノは、今度はキノの額に軽くくちづけして、立ち上がろうとする。
「それじゃあ、おやすみ。キノさん」
「……待って!シズさん」
気が付いた時には、シズの腕にしがみついていた。
「キノさん?」
「えっと、その、あの………」
その行動に一番驚いていたのは、キノ本人だった。シズを引き止めてはみたものの、次にどうして良いかがわからず、頭の中で混乱がぐるぐると渦を巻く。
その渦はキノの心を追い立てて、さらに突拍子も無い行動を引き起こした。
「……ひゃあっ!!?キ、キノさん?」
むぎゅう。
そんな音が聞こえてきそうな勢いで、キノはシズの胸の二つのメロンを鷲掴みにした。
手の平から伝わってくるのは、心地よいあたたかさと、ほどよい弾力、圧倒的な量感はキノの心に清清しいほど強烈な敗北感を与える。
でも、それさえもがキノには愛しかった。
どんなに姿が変わってもシズはシズで、そのシズに素敵だと言ってもらえる自分なら、それもいいのではないか。初めてそう思う事が出来た。
「きょうのボクはろくでもないヨッパライで、つまりエロエロなろくでなしなんです」
「キノさん落ち着いて……って、ひあああっ!!」
「にがしません。………にげちゃいやです。シズさん……」
豊満なバストをキノの指先が揉みくちゃにする。男では絶対に味わえない感覚に(まあ、キノも味わった事はないが)シズの体が弱弱しくベッドにへたりこむ。
「で、でも、今のこの体じゃ、キノさんの相手なんて……」
「いいんです。シズさんなら………シズさんがいっしょにいてくれるなら」
それだけの事を言うのも恥ずかしくて、キノは顔を隠すようにシズの胸に顔を埋める。
すると、なんだかもっと恥ずかしくなって、シズに抱きつく腕にさらに力がこもって、それがもっと恥ずかしくて。
ぐるぐると連鎖する恥ずかしさの中で、キノの胸の中が熱くなっていく。
「いっしょにいて、ボクにさわって、ボクのことステキだって、もっといってください」
「ひゃ、あああっ!!……キ、キノさん!…それ、やめ……ああっ!」
緑のセーターと、慌てて買ったせいか微妙にサイズのあっていないブラジャーをたくし上げると、先端を硬く尖らせて震えるシズの胸が露になった。
キノは一切の容赦もなしに、その弾力に小さな手の平を沈み込ませ、指先で乳首を転がし、吸い付いて舌先で弄ぶ。
「……くちゅぴちゅ……ああ…シズさんのムネすごい……」
「ふあっ……あああっ……こんな、へんに……うあああっ!!!」
シズの胸を揉みしだく内に、脳裏に『年上のお姉さんに迫る少年』というワードが浮かんで危うく落ち込みそうになるが、キノはなんとかそれを振り払う。
慣れない愛撫に没頭しようと指の動きを激しくしていくと、わかりやすいぐらいにシズからの反応が敏感になっていく。
無我夢中で続けられる愛撫は次第に胸から他の場所にも広がっていく。
背中からお尻にゆっくりと手の平を這わせると、伝わってくる曲線のなめらかさに、キノは思わず息を飲む。
キノの愛撫で、シズが感じているのは明らかだった。上気した頬が愛しくて、キノは何度もキスをしてあげた。
以前に出会って、夜を共にした時とは完全に攻守が逆転した奇妙な時間。それがキノ自身の体をも熱くしていく。
「ああああっ!!!シズさんっ!!シズさんっ!!!」
「くうっ!!あああっ!!!…キノさ………あああああっ!!!」
味わった事の無い快感が、シズの全身の神経を焼き尽くした。戸惑い、翻弄されるだけのシズを、キノは休むことなく責め続ける。
そして…………。
「うあああっ!!!ひあああっ!!!…すご…あああああああああっ!!!!」
シズの脳裏を駆け抜けた、一瞬の白い電流。操り人形の糸が切られるように、シズの体からは力が抜けベッドにぐったりと横たわる。
荒い呼吸に喋る事もままならないシズ、その体にピッタリと寄り添い、キノは激しく上下する胸の谷間に顔を埋めた。
「シズさん…………」
伝わってくるぬくもりに全てを委ねているだけで、キノの胸を言い表しがたい幸せが満たしていく。
ようやく落ち着いてきたシズは、まるで母親の胸で眠る子供のようなキノの姿を認めると、ふっと微笑んで頭を撫でてやる。
「私なんかの言葉が役に立つのかはわからないけれど、それでもキノさんがほしいと言うなら、何度だって言おう」
キノが顔を上げる。真っ向から目に入ったシズの優しげな瞳の色、語りかけられた簡単な言葉が、キノの心の中に残っていた最後のしこりを溶かした。
「好きだよ、キノさん。大好きだ」
シズの腕がキノを抱き起こす。シズはキノの背中の側に回って、今度は自分の方からキノの服を脱がせにかかった。
手早くボタンを外され露にされるキノの裸の胸は、どう贔屓目に見ても大きいとは言いがたい。
背中に当たるシズの大きな胸の感触と比べると、どうしたって見劣りしてしまう。
「きれい……だな」
だが、シズにとってはそんな事はどうでもいいことだった。指先に触れる頼りない手触りは、何よりもキノを実感させてくれる、シズの大好きな感触だった。
まあ、最近は自分って小さい胸のほうが好みなんじゃないかと自覚し始めてもいたが……。
「可愛い胸、小さく震えてる私の大好きなキノさんの胸だ」
「ふあっ……や……ああっ……シズさん…やっぱりロリコ…ああんっ!!」
やっぱりキノさんからもそう思われてるんだ、と妙にがっかりしながらも、シズはキノの胸を丹念に愛撫する。
小さくて、繊細で、ちょっとした事で壊れてしまいそうで、キノの逞しい生き方とは正反対な幼すぎる膨らみ。
小さな突起を大事に大事に指で摘みながら、薄い胸全体を揉み解す。その度に駆け抜ける甘い衝撃がキノの視界に何度も星を飛ばす。
「…ああっ!!やあんっ!!……ああああっ!!!シズさ…ん!?」
首筋を舐め上げる舌の動き、執拗に乳首を転がしてくる指先、女性の体になって繊細さを増したシズの責めが、キノの体にじわじわと快感を染み渡らせる。
次はココ、その次はソコと、キノの快感のポイントを知り尽くしたように、シズの指先がキノの体中を滑り、快感の花を開かせていく。
触れ合った肌に感じる柔らかさと熱、絹を思わせるなめらかな表面を汗が濡らし、互いの体温が混ざり合い一つになっていく。
「あああっ……シズさん…すご…んむぅ…んぅ…ああっ!…はぁはぁ……」
「キノさん!!……キノさん!…んっくぅ…んんっ……キノさんっ!!」
互いの舌が蕩けるほどにねっとりと絡み合うディープキス。息継ぎの合間に熱に浮かされた瞳で見つめ合うと、それだけで大事なところが湿りを帯びてくる。
本来なら有り得ないはずの、擬似的な同性愛体験は愛し合う二人の神経を否応もなく昂ぶらせ、与え合う快感をさらに大きくしていく。
肌を擦り合わせ、手足を絡め合い、互いに相手の事だけしか考えられなくなっていく。
「ああ……うあっ!…はぁはぁ…やあ…キノさ…ああああんっ!!!」
「シズさ…ん……すご…すごい!!きもちいいですっ!!!きもち…い…」
いつしか二人は互いの最も敏感な部分を擦り合わせていた。迸る汗と、奥からとめどなく溢れ出してくる蜜を潤滑油に、二人の行為は加速していく。
くちゅくちゅ、くちゅくちゅと、糸を引くほどに粘りをもった液体がかき混ぜられる。ガクガクと勝手に動いてしまう腰を止める事が出来ない。
こちらの都合などお構い無しに、許容量を遥かに超えて高まる快感が、二人の理性をどろどろと跡形も無く溶かし去ってしまう。
「ああああっ!!!シズさん…も…ボク…ボクぅ…やあああっ!!!」
「…キノさん……キノさん……もう…私は……くあああっ!!」
気持ちよすぎて訳がわからなくなってしまう。視界に何度も飛び散る火花が、押し寄せる快感が二人を巻き込み、押し流していく。
腰の動きはさらに激しいものとなり、ヒートアップしていく行為の中で、キノとシズはついに限界を迎えた。
「キノさんっ!!キノさんっ!!!!ひああああああああああああっ!!!」
「ああああああっ!!!シズさんっ!!好きですっ!!!好きですぅううううううっ!!!!」
弓なりに反らせた体を激しく震わせて、二人は同時に絶頂へと登りつめた。

夜が明ける。差し込む朝日の眩しさに目を細めながら、キノはベッドの上に起き上がった。
傍らから聞こえるシズの穏やかな寝息、ふとシズの寝顔が見たくなったキノは寝息の聞こえる方に顔を向けた。
「あっ…………!」
シズの姿は男のものに戻っていた。鍛えられ引き締まった体つきは、以前のシズのものと寸分も変わりが無い。
「そっか………まあ、シズさんはこっちの方がいいな」
一人肯いたキノは、着替えをしようとベッドの上から降りる。着替えを収めた鞄の方に足を踏み出したその時、キノは妙な下半身に違和感を感じた。
「なんだろ?」
違和感の正体を確かめようと下を向いたキノ、その表情が一瞬で凍りついた。
「な、な、な、な、な………なんだ、これ?」
キノの視線の先にあったもの、それは………。

女体化病は正式な名称ではなく、世間一般に呼び習わされている俗称に過ぎない。
実際、この病気はかなり低い確立ではあるが、女性においても発症するのだ。
「ボクが男の子になるなんて………」
昨日の店の、昨日と同じ席に座って、キノは深くため息をついた。女体化病という名前に騙されて、自分がそんな災難に見舞われるとは考えてもいなかった。
シズが男に戻った直後に、それと逆の事が自分に起こるなんて、たちの悪い冗談だとしか思えない。
だが、男の子の体になった事自体がキノを苦しめる最大の要因ではなかった。
「それにしても、なんでボクの体、女の子のときとほとんど変わらないんだろう………」
今のキノと、昨日のキノを比べて、その変化に気がつく事が出来る者は少ないだろう。
プロポーションは女の子のときとほとんど変わらず、股間のアレがコレに変わったことぐらいが、唯一の目立った変化だと言えた。
はっきり言ってショックである。やっぱり自分は女性失格ではないのだろうか?
そして、キノ悩みのタネはさらにもう一つあった。
「元気を出してください、キノさん」
「ますたぁ~、なんであなたまで……」
キノの目の前にたったマスターの姿は、顔の左半分に縦に走る傷がちょっと怖い、「女性」だった。
しかも相当な美人だ。顔の傷すら、その美しさを引き立たせるスパイスになっているようだ。
その上、どうやらこれがマスターの本当の姿であるらしい。
「気持ちはわかると言ったでしょう」
そう言って微笑むマスターの笑顔は、なんと魅力的な事だろうか。
マスターはつい一週間前に女体化病にかかった女性だったのだ。姿が変わっても店を休むわけにはいかないので、男の姿でカウンターに立っていたのだ。
なるほど、昨日親身にキノの相手をしてくれたのも、同性であるが故の共感があったのだろう。
だが、性別が同じでもキノとマスターには決定的な違いがあった。
「マスターも肩が凝る側の人間だったんですねぇ~」
恨めしげなキノの視線の先には、威風堂々と君臨するスイカ大の球体が二つ。
騙された。裏切られた。こんなのをぶら下げてる輩に、自分の気持ちなどわかってたまるものか。
「でも、私も昔はなかなか胸が大きくならなくて悩んだ事もあったんですよ」
「いつの時代の話ですか!!どうせ、12、3歳の頃の話なんでしょ!!」
「うふふ、まあ、そうなんですが………」
ムキになって叫ぶキノの顔を見て、くすくすと笑うマスター。上体が軽く揺れて、大きな胸が左右に震える。
たゆん。
悪魔の音波がキノの脳天を直撃した。
「うわあああああああああああああんっ!!!!みんな大嫌いだぁあああああっ!!!」
キノの悲痛な叫びが、夜の街に大きく響き渡った。

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