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冬の窓辺であなたと一緒に(ヴィル×アリソン)

凍てつく冬の寒さだって、二人寄り添っていればどうって事ない。
むしろ、間近に感じる体温は愛する人がそこにいる、その事実をより明確に感じさせてくれる。
ってな感じで、寒い冬、寄り添いあうヴィルとアリソンのお話です。






「まだ結構熱があるみたいだね、アリソン」
そう言ってヴィルは、アリソンの額の上に濡れたタオルを乗せてやる。
ベッドの上、布団や毛布にぬくぬくとくるまったアリソンは、そんなヴィルの姿をぼーっと眺めている。
いつも元気なアリソンが、久し振りに風邪をひいて倒れたのは、昨日の夕方のことだった。
ひどい熱を出したアリソンのために、ヴィルは医者を呼んだり、つきっきりでアリソンの看病をしてくれたりした。
「…ヴィル、私のために…ごめんね…」
熱にうなされるアリソンを看病するために、ヴィルはほとんど睡眠をとることが出来ないでいた。
その疲れを微塵も感じさせること無く、ヴィルはアリソンに微笑みかける。
「いいんだよ、アリソン。一緒に住んでるんだから、こういう時はお互い様だよ」
めったに風邪をひかない分だけ、アリソンの熱はひどく、ヴィルは大層心配させられた。
活動的なアリソンにとって、こうして一日中家の中でじっとしているのは辛いことだったろうと、ヴィルは思う。
ヴィル自身も元気なアリソンを見ているほうが嬉しいのだ。アリソンの風邪も少しは落ち着いてきたようで、ヴィルはほっと胸をなでおろす。
「とにかく山は越えたみたいだから、もう少し安静にしててね」
そう言って、ヴィルがベッドの横の椅子に腰を下ろすと、アリソンは寝返りを打ってヴィルのほうに向き合う。
「ねえ、ヴィル……」
「何?アリソン」
か細い声で語りかけてくるアリソンの声を聞き漏らさないように、ヴィルは身を乗り出す。一方のアリソンはいやに真剣な顔つきだ。
「…風邪といえばさ……何か思い出さない?」
「……?昔、家で風邪をひいたときの事とか?」
ヴィルの答えに首を横に振ったアリソンは、にんまりと笑顔を浮かべる。
「…『風邪って、うつせば直るらしいよ』とかって、お決まりのパターンがあるじゃない!!!」
そう言って、アリソンはむくりと起き上がり、ヴィルに向かって大きく両腕を広げながら抱きつこうとして……
「…なーんてね」
ヴィルに抱きつく寸前で止まった。
「………抱きつくんじゃないの?」
驚いた顔のままつぶやいたヴィルに、アリソンは笑顔のまま首を横に振る。
「…ううん。ヴィルに風邪うつしたくないし、元気になったら、その時にね…」
なんだか嬉しそうにそう言ったアリソンは、ふらりとベッドに倒れる。
「あはは、やっぱりまだ無理は出来ないみたい……」
無理に起き上がったことだけで、結構体力を消耗したらしく、アリソンはぐったりとしながら天井を見上げる。
「大丈夫、アリソンならすぐに良くなるよ」
そんなアリソンに毛布をかけ直してあげてから、ヴィルはアリソンの頭を撫でてやる。
アリソンは嬉しそうに目をつぶり、ヴィルの手の平の感触を楽しむ。
それから、不意に目を見開き、アリソンはヴィルの右の手をとった。

「どしたの?アリソン」
「ん、ちょっとね……」
アリソンはヴィルの手を自分の両手で何度も撫でて、頬にぴったりとくっつける。
「風邪うつしたらいけないから……、キスとかも無理だし……」
アリソンの肌から、いつもより高い体温が、ヴィルの手の平全体に伝わる。
「……だから、そのかわりに……」
愛しげに見つめるヴィルの指先、その内の人差し指と中指を、アリソンはそっと口に含んだ。
「……えっ!?」
動揺するヴィルの目の前で、アリソンは口に含んだ二本の指に舌を絡ませる。
さっきまで触れていた肌よりも、さらに高い熱をもった舌がヴィルの指先を這い回る。
「……ア…アリソン?…」
「…ん…んむぅ…くちゅくちゅ…ぴちゃ……んぅ…」
二本の指の間、つめの上、指の腹、まんべんなく指全体を撫で回す舌がヴィルの背筋をぞくぞくさせる。
熱く柔らかく溶けてしまいそうな舌の感触、その手で触れるはずのなかった感触に、ヴィルは心臓の鼓動が早まっていくのを感じる。
「…ん…うぅん…くちゅ…ぴちゃ……んぅ…ぷはぁ…」
ヴィルの指先を散々もてあそんでから、アリソンは口を指から離した。
しかしヴィルは、解放されてもすぐには動けず、ゆでダコのように顔を真っ赤にして、固まってしまっている。
そんなヴィルに、こちらも熱以外の理由で顔を赤くしながら、アリソンが語りかける。
「…えへへ…ドキドキした?」
「…えっ!?…ああ…あの……その…う、うん……」
すっかり混乱の中に取り残されたヴィルは、それだけの事を答える言葉もとぎれとぎれになってしまう。
そんなヴィルの様子を見ながら、アリソンはにっこりと笑い、自分も赤くなった顔を隠すように毛布と布団を顔の所まで持ってくる。
「……それじゃ、安静にしてるわね…」

そう言われてやっと、弾かれたようにヴィルは動き出す。
「す…水分をとった方がいいから……お茶…持ってくるよ…」
そう言って、逃げ出すように寝室から飛び出たヴィルは、寝室の入り口のドアに寄りかかり、自分の鼓動を鎮めようとするかのように胸に手をあて、深呼吸する。
「……うあ、まだドキドキしてくる…」
自分の右手をじっと見つめると、さっきまでの感触が蘇り、鼓動は静まるどころか、余計に早くなっていく。
熱に浮かされたような表情のままのヴィルは、アリソンの舌が触れていた人差し指と中指を自分の口元へと運ぼうとして………
「…あっ…ヴィルぅ~」
アリソンの声にぴたりと動きを止める。
「ちゃんと手洗ってね…この風邪、たちが悪いから…」
これ以上無いほどに赤くしていた顔が、さらに赤くなる。
耳まで赤くしたヴィルは、足早に台所に向かい夢うつつのような表情で、アリソンに言われたままに手を洗う。
多少、名残惜しそうに……
ヤカンを火にかけ、お湯が出来るまでの間ヴィルはぽーっとしながら思う。
アリソンに言われてみるまで気がつかなかったこの気持ちが、今はヴィルの心をこんなに揺り動かしている。
きっと出会った時から、ずっと持ち続けてきたこの気持ち……、改めて気付かされる。
「ずっとアリソンのことだけ見てたんだ、僕は……」
そう、妖精に心奪われたあのときから、勝負は既についていたのだ。
湧き上がったお湯で淹れたお茶を持ち、再びアリソンのいる寝室に向かうヴィルの足取りは、いつもより心なしか軽やかだった。

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