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『歌姫の隣で』(キノの旅Ⅹよりエリアス×サラ+キノ)

久しぶりに更新。
といっても過去作からの発掘品ですが。
ネタとしてはかなり今更なのですが、キノの旅Ⅹの『歌姫のいる国』で登場したエリアスとサラ、そこにキノも加わってえっちぃ展開になるといったお話です。
初々しい少年少女のやり取りを楽しんでいただければ幸いです。

本編は追記からになります。




どうにもエリアスは気に入らなかった。
キノ、と名乗るあの旅人の事である。
行商人たちに同行する旅の途中、休憩のために停まった馬車の荷台に腰掛けて、エリアスは一人で俯いていた。
ふとしたきっかけで誘拐犯の手伝いをする事になったエリアス。しかし、誘拐した女の子サラの持つ特殊な事情のために、誘拐計画は大きく失敗する事になった。
彼に声をかけて誘拐の手伝いをさせたロブも、その仲間のケインも、リーダー格だったユアンも皆死んだ。爆弾で吹っ飛ばされたのだ。
そして、エリアスの人生も大きく変わった。任された仕事を全うするために、サラを守るために、エリアスは国中を逃げ回った。
しかし、追っ手についた殺し屋は凄腕だった。逃げ続け、抵抗し続けたエリアス達は、サラの暮らしていた屋敷でついに追い詰められてしまう。
しかし、殺し屋がナイフを抜き、サラが殺されてしまうと思ったその時………
「……………」
そこでエリアスは回想をやめ、顔を上げる。少し離れたところで談笑しているサラの方に目を向けた。足はついている。幽霊ではない。
彼女の話の相手はキノという名前の、エリアスとそう年も離れていない若者だ。キノは旅人だった。
そして、キノはサラの世話をしていた大人たちの依頼を受けて、二人を追い詰めたあの殺し屋で、その上、エリアスとサラを国の外に逃がした命の恩人でもあった。
エリアスの視線の先、キノが何かを言ったのを聞いて、サラがクスクスと笑う。本当に楽しそうに、キラキラした笑顔を浮かべる。
見ているエリアスの表情は、わかりやすいほどの膨れっ面だ。
「なんなんだ?一体、どうしてなんだ?」
どうして彼女は、サラはあの旅人と、あんなに楽しそうに話せるのだろう。最後には自分たちの命を救ったとはいえ、アイツは最初はサラの命を狙っていたのに……。
また、サラが笑った。素敵な笑顔だった。彼女が笑うたびに、エリアスは落ち着かない気分になる。ドキドキしてるのか、ハラハラしてるのか、自分でもわからなくなる。
確かに、あのキノという名前の旅人は、顔も悪くない。物腰も丁寧で落ち着いてるし、パースエイダーの腕前を考えれば、エリアスよりよっぽど頼り甲斐がある。
10代半ばだという年齢から考えれば、多少背が低いのが難点だったけれど、総合的に見れば十分に魅力的だ。サラが惹かれるのも無理はない。でも、だけど………。
あの二人の姿を眺めながら、エリアスの悩みは深くなるばかりだ。
「どうすればいいんだ、僕は………」
それは言ってみれば、初恋に揺れる少年の、可愛らしい嫉妬といったところだった。言い知れない感情の乱れに、思い悩む自分自身に、エリアスの心は揺れ動いているのだ。
ただ、実のところを言うと、問題はもう少し複雑だった。エリアスがキノに複雑な感情を抱くのは、何もサラのためだけではない。
ほんの少し前まで恐ろしい敵だった人物に、一体どう接すれば良いのか。ユアン達を殺した相手を前にして、どんな顔をしていればいいのか。
エリアスには解らない事だらけだった。
僅か数日で一変した自分の人生。今はもう遠くに離れてしまった故郷、これまでの生活。思い悩む事には事欠かない。
そのさなかで、エリアスは悩んで、悩んで、空回りを繰り返した思考は、結局目の前の旅人の事に戻ってくる。
「……………はぁ」
小さくため息をついて、もう一度キノとサラの姿を見る。頭の中は一向にまとまらない。ただ、エリアスには目下、懸念している一つの問題があった。
今は、行商人たちと一緒に旅をしている自分たちだが、いずれ目的の国に辿り着く。その時起こり得る問題に、エリアスは断固として対処するつもりでいた。
「これだけは、あいつの思い通りにはさせないぞ……」
サラがまた微笑む。その笑顔に、エリアスは再度決意を固める。彼が密かに懸念している問題、それは………。

目的の国への道中でも、辿り着いてからも、サラは機嫌よく過ごしていた。
今夜宿泊する予定の安ホテルのロビーで、オンボロソファーに腰掛けて、彼女はひとり微笑んでいた。
故郷から逃げ出した今、多くの人が自分のことを必要としてくれたあの生活は、もう戻ってこない。だけど、サラは後悔はしていなかった。
彼女は得難いものを手に入れたのだ。最後の最後まで、命懸けで彼女の事を守ろうとしてくれたあの少年、エリアスが側にいれば、見知らぬ国での生活もきっと恐くない。
サラはしみじみと思い出す。暗い森の中で、自分を必ず守ると誓って、強く抱き締めてくれたエリアスの腕の暖かさを。彼の瞳に宿ったまっすぐな光を。
「…………エリアス」
ウキウキして、飛び跳ねてしまいそうなこの感情。それだけで、サラの胸の中は一杯になってしまうのだ。
そしてもう一人、サラたちを追い詰めた張本人にして、命の恩人であるあの旅人……。キノと名乗るあの若者と、彼女は道中たくさん話をした。
「凄いなぁ、キノさん………」
うっとりと、サラは呟く。キノは彼女に、今までの自分の旅のことを、色々と話して聞かせてくれた。
キノが今まで立ち寄った国の事、言葉の端々から窺える旅に対するキノの姿勢、考え方、それを知れば知るほど、サラの中でキノがより魅力的な人物に思えてくる。
素敵な、本当に素敵な女性だと、素直に思えた。
「まだ私とそんなに年も違わないのに、あんな風に一人で色んな所を旅して、色んなものを見てきたんだ………」
サラはいつのまにか、一度は自分の命を狙いさえした、素直に善人であるとは言い切れないこの旅人の少女の事が、好きになっていた。
ただ、エリアスも一緒に、三人で話が出来ればと思ったのだけど、サラがキノと話しているとき、浮かない表情でこちらを見てくるばかりで、彼は近付いて来ようとしなかった。
残念だけれど、エリアスはキノに対して色々と複雑な感情があるようだし、仕方が無いところだろう。むしろ、キノと仲良く話している自分の方が、変なのかもしれない。
「私も、キノさんみたいになれるかな……」
サラは思う。見知らぬ大地を一人旅する彼女の、あの強さの少しだけでも、自分のものにする事ができたなら………。
今のサラにとって、キノはすっかり、憧れの対象へと変わっていた。
と、その時、フロントで今夜宿泊する部屋について話していたキノが、こちらに戻ってきた。少し浮かない表情だ。なにか問題があったのだろうか?
「う~ん、困ったな……」
「どうしたんですか?」
「ホテルの部屋がほとんど満杯で、一番小さな部屋を二部屋空いてるだけらしいんだ……」
二人用の部屋に簡易ベッドを入れてもらって三人で使うのが、当初のキノのプランだったのだが、どうやら当てが外れたらしい。
「今から他を当たっても、この時期だと部屋がある見込みはないそうなんだ。だから……」
要するに、部屋割りの問題だった。三人の内二人が、狭い部屋を無理して使う事になる。
サラは迷った。自分はエリアスと一緒の部屋に行くべきだろうか?でも、それは何だか気恥ずかしいし、やっぱりキノと一緒に女の子同士でいた方が……
だがその時、同じように考え込んでいたキノの腕が、ぐいと後ろから引っ張られた。
「キノさんと僕で、一緒の部屋を使おう」
「……えっ!?」
「…エリアス!?」
キノとサラが答える暇も与えずに、部屋の鍵をひったくり、キノの腕を引っ張って、エリアスはエレベーターの方に歩いていく。
「………な、何で?どうして?」
ロビーに一人取り残されて、サラは呆然と呟く事しか出来なかった。

そして、夜になった。
「これで一安心だ……」
ベッドの中で、エリアスが呟く。
ホテルの部屋の状況次第では、キノとサラが同室などという事になりかねない。それがエリアスの抱いていた危惧だった。
どうやらその危険が現実のものになりそうだと知って、エリアスはかねてから決めていた通りに素早く行動した。強引なやり方で、キノと同室になったのだ。
ともかくこれで、一人きりの部屋の中、キノとサラがどんな風に過ごしているのかを想像して、ヤキモキしながら一晩過ごす事にならずにすむ。
ただ、多少の誤算もないではなかった。予想以上に狭かったこの部屋は、キノのモトラドであるエルメスを運び入れると、簡易ベッドを置くスペースさえ無くなってしまった。
お陰でエリアスとキノは一人用のベッドの上に身を縮めて、並んで寝る事になってしまった。
それでも、サラが無事ならそれで良いと思っていたエリアスだったのだが、何かが変なのだ。どうにも、おかしいのだ。
「なんでだろ?どうして落ち着かないんだろ?」
考えてみると、この部屋割りに決まってから、気になる事が多かった。
自分と同室になる事を、何故だか妙にキノが躊躇っていた事。性別で部屋を分ける事は、別に不自然な話でもないだろうに……。
そういえば、シャワーに入る時も、キノはやけにこちらに注意を向けていた気がする。
そしてなにより、二人で同じベッドに入ってから感じている、この違和感の正体は何なのだろう?
ベッドの中で体を動かした時、軽く触れたキノの体は、妙に柔らかくてぷにぷにしていた。シャワーを浴びた後のキノから、なんだか甘い香りが漂っているような気がした。
こうして並んで寝ていると、なんだか凄くドキドキする。体中の神経が騒ぎ出したようで、どうしても眠る事が出来ない。
「………うう、何なんだよ?本当に……」
真っ暗なベッドの上で、頭の中でグルグル回る疑問を振り払うように、エリアスは勢いをつけて両手を横に広げた。
「ぎゃんっ!?」
突然悲鳴が上がって、エリアスは我に返った。そうだ、今このベッドを使っているのは自分一人ではない。その事をずっと考えていたのに………
「ひどいよ、エリアス……」
「ご、ごめん……」
文字通り叩き起こされ、膨れっ面でエリアスを睨むキノ。困惑の原因の目が覚めて、エリアスの眠れぬ夜はさらに長引きそうだった。

一方、眠れぬ夜はサラも同じだった。
今この時も、壁一つ挟んだ隣の部屋でエリアスとキノが一緒に過ごしているのだ。想像するだけで頭がハラハラしてくる。
あの時、エリアスは明らかに自分の意思で、キノと同室になろうとしていた。それが何を意味するのかは、考えてみればすぐにわかる事だ。
「うう、キノさんって、ほんとに素敵だからなぁ………」
同じ考えに立てば、ここまでの道中でのエリアスの不自然な態度、あの浮かない表情にも説明がつく。
多分、エリアスはキノと仲良くなりたかったのだ。だけど、サラの方が先に仲良くなって、キノをほとんど独占してしまった。
エリアスはきっと、自分に嫉妬していたのだ。もちろん、女の子であるサラがキノをどうこうする筈はないが、サラがいた事でエリアスがキノと話す機会を失ったのは確かだ。
だけど今夜、エリアスはついにキノと二人きりになるチャンスを手に入れた。待ちに待った時が、ついに訪れたのだ。
「ああ、どうしよう、どうしよう」
枕元のスタンド一つだけをつけた薄暗い部屋の中、一人きりのベッドの上で、サラはじたばたともがく。心配で、やきもきして、頭がおかしくなってしまいそうだ。
サラの胸の内を、エリアスの笑顔と、キノの凛々しい眼差しが交錯する。一体この壁の向こうで、あの二人はどんな夜を過ごしているのだろう。
「ああああああっ!!!もうっ!!!!」
そしてついに、サラの我慢の限界が訪れた。この悩みを解決する方法は一つだけ、最初っから決まっているのだ。
ベッドから起きて、靴を履く。立ち上がったサラは自分の両頬をパシンと叩いてから
「よし、行こうっ!!!」
部屋のドアを開け、暗い廊下に飛び出す。後の事など考えない。今は一刻も早く、隣の部屋のドアをノックしたかった。

で、再び場面はキノとエリアスの部屋に戻る。
「………そんな感じで、ボクは色んな国を旅してきた。かれこれ、もうどれくらいになるだろう?旅に出てから、もう随分と経ってしまった気がする」
暗闇の中で、エリアスはキノの話を聞いていた。キノを叩き起こしてしまった事を謝っている内に、今まで何となく話しにくかったキノと、言葉を交わせる雰囲気が生まれたのだ。
エリアスの何気ない問いかけに、キノは丁寧に答えてくれた。自分が今まで旅してきた色んな場所のことを、ポツリポツリと話してくれた。
「……辛くない?」
「まあね。確かにこれまで、色んな危ない目にもあったし、辛い事もたくさんあった。だけど、それでもボクは旅を続けたいと思ってる」
「……ふーん」
キノの言葉の一つ一つが、今まで得体の知れなかった殺し屋まがいの旅人に、具体的な輪郭を与えていく。
いつのまにかエリアスは、キノのことを、もっとたくさん知りたいと思うようになっていた。
キノのことをもっと知って、今の自分を困惑させている原因の一つ、それをはっきりさせたいと思った。
だからエリアスは、恐る恐るその問いをキノに投げかけた。
「………ところで、さ……」
「何?」
「………どうして、僕らを助けたの?」
問われて、キノがしばらく沈黙した。今、二人が見知らぬ異国のホテルの一室で、同じベッドに横になっているそもそもの原因、その核心を突く問いだった。
静かになった部屋の中、二人の呼吸音だけが妙に耳につく。沈黙の中、エリアスは辛抱強くキノの答えを待った。
やがて考えがまとまったのか、キノは先ほどまでと変わらぬ何気ない口調で、その答えを語り始めた。
「………そもそも、あまり気持ちのいい仕事じゃなかった。無駄に人を殺したくなんかなかった。
依頼した人たちには切羽詰った事情でも、殺される方はたまったものじゃないからね。殺さずに済むなら、それが一番良かった」
「でも、結局引き受けたじゃないか」
「うん、報酬の品が、ボクにとってどうしても必要なものだったんだ。あの時は気楽に構えていたけど、いずれその事でとても困った事になるのは目に見えていた」
「困った事って?」
「ボクは、旅を出来なくなっていたかもしれない。場合によっては、何もない荒野の真ん中で立ち往生してたかもしれない。それは嫌だった。だから、ボクは依頼を引き受けた」
そこでキノは一息入れた。エリアスも黙ったまま、しばらくの間キノの言葉の意味を考える。
「…………わからないよ、やっぱり」
「だろうね。これは、ボクが自分で考えて決めたことだもの」
「ユアンさん達はあっさり殺しておいて、サラのこともギリギリまで追い詰めて、それがどうして、こんな事になっちゃうんだ?」
「報酬はどうしても必要だった。だけど、殺さないですむならそれが良いとも思っていた。最後の最後、土壇場でボクはあの方法を思いついた。
それで、エリアスとサラを助けた。ボクは自分のやりたいと思ったことを、ボクの出来る順番で、やっていっただけなんだ」
「おかしいよ、それ………」
「そうかもしれない。…………ボクは自分の旅の事も、他の人の命も、どちらも大事なものだと思う。でも、ボクにはその全てをどうにかするだけの力はない。
ボクにできるのは、その時々で必死に考えて、自分が大事だと思うものを大切にする事だけ。ただ、それだけの事なんだ」
再び考え込んだエリアスの横顔を眺めながら、キノはさらに、愉快そうにこう続ける。
「おかしいといえば、エリアスだって同じじゃないか」
「えっ!!?」
「知り合ったばかりの女の子に、普通あそこまでしてあげる人はいない。たとえサラを好きになったのだとしても、あんな風にはできない」
「だって、サラは僕が守らないと……」
「つまり、大事だと思ったんだよね。他の何を犠牲にしてもいいと思えるぐらいに、サラを守りたいと思った」
キノに言われて、エリアスは思い出す。ただサラの命を守るためだけに、自分の全てを投げ出して国中を逃げ回ったあの時のことを……。
「ボクたちは同じ事をしてただけだよ。それぞれ自分にとって大事なものが何なのか考えて、それに従って行動した。そうだよね、エリアス?」
「うん……」
しごく素直に、エリアスは肯いた。
まだ全てに納得できたわけではない。これから先、あの出来事の全てに納得できる日が来るとも思えない。
ただ少しだけ、何となくキノの事がわかったような気がしただけ。それでもエリアスの中で、混乱したまま放置されていたものが、ようやく落ち着いたような気がした。
無慈悲に自分たちを追い詰めようとしていたのに、突然手の平を返して自分たちを助けたキノ。
そのあまりに唐突な変化が、エリアスに、キノを何か得体の知れないもののように感じさせていた。
もちろん、今もキノが何を考えているのかはわからない。ただ、まるで脈絡が無いように見えたキノの行動に、キノなりの一貫したものがある事がわかっただけだ。
それだけの事で、今のエリアスには、キノの存在が以前より近しいものに感じられるようになっていた。
ようやく柔らかい表情を向けてくれたエリアスに、キノも少しホッとしたようだった。と、そこでキノは何かを思い出したように、口を開いた。
「………そうだ、ついでだからもう一つの問題も解決しちゃおう」
「えっ、問題って?」
「それはね、エリアス~」
突然キノが、自分の方にずずいと顔を突き出してきて、エリアスは目を丸くして固まった。
「いい加減、気付いてもいいころだと思うんだけど………ていうか、本当に気付いてないの?」
「だから、一体何の事なのか、言ってくれなきゃわからないよ」
「ううん、本当に気付いてみたいだな、……いいかいエリアス、実はボクは……」
と、その時だった。
「くしゅんっ!」
ドアの向こうから微かに、しかしハッキリと、誰かのくしゃみの音が聞こえた。しかも、聞き覚えのある声だ。
エリアスはキノと顔を見合わせてから、枕元の電気スタンドのスイッチを入れて、部屋の入り口へと向かう。大きな音を立てぬよう、ゆっくりとドアを開ける。
恐る恐る、暗い廊下に顔を出した。
「………サラなの?」
「……え、え~と……こんばんは、エリアス」
廊下にひっくり返っていたサラは、何とも気まずそうな表情を浮かべて、エリアスに答えたのだった。

少しだけ、時間をさかのぼる。
勢い込んで部屋を飛び出したサラだったが、今の時間を冷静に考えてみれば、そもそもエリアスたちが起きているとは思えなかった。
ドアの前まで来て、結局自分の部屋に戻ろうとしたサラ。しかしその時、部屋の中から微かに聞こえてくる声に気が付いた。
一人のものではない。聞き覚えのある声が二つ、内容はわからないけれど何かを話している様子が聞き取れた。
「こんな遅くまで話し込んでるなんて……』
どうやらこの一晩だけで、キノとエリアスは随分と仲良くなったらしい。いや、もしかしたら自分が知らなかっただけで、あの二人はもともと………。
サラはドアをノックする事も出来ず、かといって自分の部屋に戻る事も出来ず、その場にぺたんと座り込んだ。そして、聞こえてくる二人の声に、ただ耳を傾けた。
それからどれだけの時間が経過したのか、夜の廊下の冷たい空気のため、サラの体は冷え切ってしまっていた。そして……
「くしゅんっ!!」
まずい、と思ったときにはもう遅かった。ドアの向こうからこちらに近付いてくる気配に、サラは慌てて立ち上がろうとして、結局こけてしまったのである。
「サラ、だいじょうぶ?」
「うん、平気……」
恥ずかしい気持ちを必死に押さえつけながら、エリアスの手を借りて、サラは立ち上がった。
「どうしたの?こんな遅くに……」
「あの、えっと、その……」
どう答えて良いかわからず、サラは口ごもる。エリアスの顔をマトモに見る事が出来ず、彼の視線から目をそらす。何となく、本当に何となく、部屋の中に視線を向けた。
そして、サラは見てしまった。
「……………キノさん?」
狭い部屋の中は、エルメスとベッド一つでほとんど一杯になっている。一つきりのベッド、その上に座るキノ、彼女の隣には明らかに誰かが寝ていた跡が残っている。
サラはぽかんとした表情で、その光景の意味するところを考えていた。そして辿り着く。想像したくもない、最悪の解答に……
「サラ?どうしたの、サラ?聞こえてる?」
サラの様子がおかしい事に気が付いて、エリアスはサラの肩を持って、その顔を覗き込んだ。そして………
「えっ!?サラ!!?」
その表情に、思わず後ろに下がった。
「……………エリアスぅうううううううううううううっ!!!!」
ズン!!サラがエリアスの方に一歩踏み出す。泣きそうなのか、怒ってるのかわからない凄まじい形相を浮かべたサラの顔が、目の前に近づいてくる。
気圧されたエリアスが部屋の中に後退する。するとそれに合わせて、ズンズンとサラが歩を進めてくる。
狭い部屋ではそもそも大した逃げ場もない。あっという間に、エリアスはベッドの足元まで追い詰められてしまう。
訳がわからず、今にも泣き出しそうなエリアスの前で、サラはすーっと吸い込んで
「……エリアスのっ……ばかぁああああああああああああああっ!!!!!!」
大きく叫んで、エリアスをベッドの上に押し倒した。そしてエリアスの体の上にのしかかり、小さな拳でポカポカと、エリアスを叩き始めた。
「エリアスのバカっ!!ばかっ!!!ばかっ!!ばかっ!!!」
「サラ、やめてよっ!!痛いよっ!!僕が何したって言うんだよぉ!!!」
その光景を見て、キノはため息一つ。どうやら全ての事情を悟っているのは、自分だけだと気付いたのだ。
「………エリアス、さっきの話なんだけど……」
「今、それどころじゃないですっ!!!見てないで助けて下さいっ!!!!」
「いいから聞いて、多分、サラちゃんがこんな風になった事とも関係あるから……」
「だから、なんですかっ!!?」
「実は………………………………ボク、女の子なんだよ」
サラの下敷きになったまま、エリアスが固まる。
「それって、どういう………」
「聞いたまんまだよ。ボクは女の子だ。エリアスも、何か変だなとは思ってたんじゃないの?」
エリアスが無意識に感じてきた様々な疑問が氷解していく。しかし、それがサラのこの剣幕とどういう関係があるというのか?
「普通、怒るよ。好きな男の子が、自分以外の女の子と同じ部屋にいて、その上同じベッドの上に寝てたりしたら………」
「って!?ええっ!!?」
その意味を理解して、エリアスの顔がゆっくりと、まるで郵便ポストのような赤に染まっていく。そのまま、エリアスは動かなくなってしまった。
「さて………」
エリアスが完全に機能停止したのを見届けてから、キノはもうほとんど泣きじゃくっているサラの顔を覗き込んだ。
「サラちゃん……」
「何よ、キノさんもエリアスと一緒に二人で仲良くしてたんでしょ!!もう知らないんだからっ!!!」
「いいから聞いて……」
そう言って、キノは抵抗するサラの耳元に口を近づけ、何やらごにょごにょと囁く。
「…………うそ」
「本当だよ。信じられないけど、今の今まで気付いてなかったみたい」
全てを理解して、サラの動きがピタリと止まる。そして彼女の胸の内に、安堵と、嬉しさと、凄まじい恥ずかしさとが、同時に押し寄せた。
サラの顔は目の前でつぶれているエリアスと同じように、耳まで真っ赤に染まっていく。
「………ううん……あれ、サラ?」
その時、ようやくショック状態から、エリアスが正気に返った。彼は目の前のサラに、おずおずと語りかける。
「ごめん、サラ。僕、キノさんとほとんど話した事もなかったから、それで気がつかなくて…………って、サラ?何?今度は何して……」
「ごめんなさいっ!!!ごめんなさい、エリアス………」
有無を言わさず、サラはエリアスを抱き締めた。それはもうギュウギュウと力いっぱいに、骨が折れるんじゃないかと思うぐらいの強さで、エアリスの体にしがみついた。
そしてその勢いに任せて、サラはさらに大胆な行動に出る。
「ちょ…サラ?…待って!!落ち着いて!!!」
「エリアスぅ………………………んんっ!」
気が付いた時には、サラに唇を塞がれていた。息を吐くことも、吸い込む事もできずに、エリアスはむぐむぐと息を止める。
文字通りの息苦しさと、バクバクとうるさい心臓の音、そして何より唇から伝わるサラのぬくもりが、エリアスの頭の中をかき回す。
すっかり混乱してしまったエリアスも、勢いだけで行動してしまったサラも、訳のわからぬまま相手の体を抱き締めて、キスを続けた。
「はぁはぁ……エリアス、好きなの。だから、どうしていいかわからなくて」
「サラ………僕も…だよ……」
荒く呼吸を切らしながら、キスを終えた二人は真っ赤な顔で見詰め合った。恥ずかしいのに目を逸らす事が出来ず、いまやすっかり二人だけの空間ができあがっている。
「…………………ボクもいるんだけどね」
哀れにも忘れ去られてしまったキノ。二人の誤解を解いた張本人だというのに、完全に蚊帳の外で置いてけぼりにされている。
キノの目の前で、エリアスとサラがもう一度キスをする。おっかなびっくりに唇を重ねた後、お互いの唇の感触に我を忘れ、無我夢中で求め合う。
「仲が良いのは良い事だけど、ちょっとはボクのことも思い出してほしいな………」
キノだって、今夜はドキドキしっぱなしだったのだ。いくら年が離れていると言っても、キノだってうら若き乙女である。男の子と一緒のベッドで落ち着ける筈がない。
その上サラまでやって来て、ベッドの上は満員状態。抱き合う二人の体が押し付けられて、二人の体温に触れるごとに、キノの顔もだんだん赤くなっていく。
「凄いな、二人とも………」
呟いて、キノはベッドの上に膝立ちで起き上がった。目の前の好きな人以外、何も見えなくなっちゃってる二人、それを見下ろすキノの胸中にむくむくと欲望が湧きあがる。
どうしていいのか当人達にもわからないまま、繰り返されるつたないキス。あたたかくてプニプニな二人の体が、ぎゅうぎゅうと密着している。
「……………うう、可愛い」
ゴクリ、キノが生唾を飲み込む。一人用のベッドに三人が乗っかっているこの奇妙な状況、体を少し動かすだけで、二人の手に、足に触れてしまうのだ。
まるで三人の体温が集まって、このベッドの上だけに滞っているような錯覚を覚える。そしてその熱気は、確実にキノの理性を蕩かしていった。
「もう、限界だ……」
ふらり、キノは抱き締めあう二人の上に覆い被さった。
「ふえっ!?な、何!!?」
「キ、キノさん何して……ふわぁああっ!?」
まだ成長途上のエリアスとサラの体を、キノは思い切り抱き締めた。キノの体重がかかった事で、二人の体の、今まで触れてなかった部分がぎゅうぎゅうと密着させられる。
そんな中、サラは自分のお腹の下あたりに触れる、妙な異物感に気がつく。固いけど、ある程度弾力があって、服の上からでもわかるくらい熱くなっている。
「う、うわああああああっ!!!!サラっ!!!サラ、ごめんっ!!!!」
「えっ!?エリアス、どうしたの?」
いきなり慌て始めたエリアスを見て、サラは考えた。そして、すぐに原因に行き当たる。それは、今サラの体に触れている熱くて固いもの。
キノと同じベッドで過ごしたり、サラに抱きつかれたりしている内に、知らず知らずに大きくなってしまったエリアスの、男の子の証だった。
「ごめんっ!!すぐ離れるからっ!!!今すぐ離れるからっ!!!」
何とか抜け出そうと、エリアスはじたばたともがいた。
しかし、キノはそんなエリアスを逃がさない。その内に、サラの体に擦りつけられて、エリアスのモノはどんどん熱くなっていく。
もがけばもがくほど、エリアスは深みに嵌っていく。股間に触れるサラの体の感触が気持ち良すぎて、いつの間にか抜け出すためにもがいている事を忘れ去っていく。
「ふあぁ……こんな…エリアスぅ……」
一方のサラの声も、徐々に熱を帯び始めていた。
性教育などで話に聞いた事があるだけの、男の子のアレが自分の体に押し付けられている。その感触だけで、サラはだんだんと正気を失っていく。
太ももの隙間が、幼い割れ目の奥が熱く疼き始める。いまだ自分の秘所に触れたこともなかったサラは、その未知の感覚に翻弄される。
耳元にかかるエリアスの吐息が、だんだんと荒くなっていく自分の呼吸が、サラをたまらなく興奮させた。
ウットリとした瞳に恍惚の色を浮かべ、溶けてしまいそうに熱くなった体に、サラは自分の全てを委ねる。
いつしかサラも、無我夢中で自分の体をエリアスに擦りつけ始めていた。
「…………あっ……あん……ひぅ……エリアスぅ、からだがあついよぅ……」
「……ああ、サラぁ…僕も、へんになっちゃうよぉ……」
男女の営みについて無知な二人は、他にどうすればいいかわからず、ただただ体を擦りつけ合った。
お互いの体の感触を感じるごとに、二人の頭を痺れるような快感が襲い、そしてそれ以上のもどかしい疼きが蓄積されていく。
気持ちいいのに、行為を続ければ続けるほど、もんもんとした気持ちが頭の中で膨らんでいくのだ。
それを晴らそうと行為に没入して、さらなる深みに嵌っていく。まるで、一度入れば抜けられない蟻地獄のように、快感のスパイラルが二人を捕えていた。
「うふふ、二人とも結構ほぐれてきたみたい……それじゃあ、そろそろ次に進もうかな……」
二人を腕の中に抱き、どんどん乱れていく二人の様子を楽しんでいたキノが、ニヤリと笑う。そして、悪戯っぽい笑顔を浮かべた彼女は……
「きゃうぅっ!!?」
チロリ、とサラの耳たぶを舐め上げた。突然の刺激に、サラが悲鳴を上げる。さらにキノは、サラの上着のボタンに手をかけ、手早く外していく。
「キノ…さん?…何してるんです?私をどうするんです?……」
「もっと気持ちよくしてあげる。もうエッチな事なしじゃいられなくなるぐらい、とっても気持ち良くしてあげる。……………そう、こんな風にっ!!」
上着のボタンを全て外されシャツをめくられ、露になったサラの可愛らしい胸。その先端で健気に震えるピンクの突起を、キノは容赦なく押しつぶした。
「ひああああっ!!!…キノさ…ひゃめっ……そこ…さわんないでぇっ!!!」
その瞬間、サラの体は雷に撃たれたように、ビクンと痙攣を起こした。背骨を駆け抜けた衝撃に、サラは一瞬呼吸さえも忘れてしまった。
そして、聞いた事もないような声で喘ぐサラの様子に、エリアスはすっかり心を奪われてしまっていた。
「うふふ、エリアス。サラちゃんって、可愛い声出すよね……」
「……ソ、サラぁ……」
「じゃあ次は、こんなのはどう?」
「……えっ!?」
気が付くと、エリアスの服もキノの手によって、いつの間にかサラの服と同じ状態にされていた。そしてその上……
「それっ、オマケっ!!」
「うわぁっ!!?」
キノが、エリアスのパンツとズボンを一気に下にずらした。同じようにサラのパンツもずらされて、何もない状態でサラとエリアスの肌が触れ合う。
初めて触れた、お互いの裸の体。柔らかくて、熱くて、触っているだけで今にも溶けそうなその感触に、エリアスとサラは声も出せない。
「それじゃあ二人とも、さっきボクがやったみたいにして、お互いに気持ちよくしてあげるんだ。さあ、始めて……」
いつの間にか、シャツを除く全ての服は、キノの手によって完全に脱がされてしまっていた。二人は言われるがままに、おずおずとお互いの体への愛撫を始めた。
エリアスがまず触ったのは、まだ小さなサラの胸だ。さきほどキノがやった事を思い出しながら、恐る恐るその先端に触れる。
「……あっ………あんっ!!」
つたない指先が与える、ほんの僅かな刺激。それだけで、サラの唇から漏れ出る声は、甘く切ない色を帯びてくる。
サラの敏感な反応に背中を押されるように、エリアスはサラの乳首をくりくりとこね回し、摘み、思いつく限りの方法で刺激を与えた。
サラの嬌声だけを道標にして、エリアスは無我夢中のまま、サラの胸を愛撫し続けた。
「…あっ…だめぇ……エリアスっ!!そんなさらたら……私、もう……っ!!!」
エリアスに触れられる度に蓄積していくジンジンする胸の疼き。サラの幼い性感は、これ以上それに耐えることが出来なかった。
悲鳴を上げて、彼女はエリアスの体に抱きつく。先程までと同じ体勢だが、ただ一つ違うのは二人の肌を守るものがもう何一つ無い事である。
きつく抱き締めれば抱き締めるほど、エリアスの体温をより強く感じる事が出来た。そのまま彼女は先程までの要領で、再び体を擦りつけ始める。
「ああんっ!!ふあああっ!!!エリアスっ!!エリアスぅうううっ!!!」
「うああっ…くぅっ!!…サラぁああああっ!!!」
やっている事は何一つ変わらない筈なのに、二人が感じる快感は先程の何倍にも膨れ上がっていた。
じっとりと汗ばんだ肌の感触、苦しげに張り詰めたエリアスのモノの固さ、サラの内股に溢れ出した蜜の湿り気。
圧倒的なまでのお互いの肉感が、二人の行為を加速させていく。もっと相手の肉体を感じたくて、さらなるスピードで肌を擦りつけ合った。
いまや二人の理性は完全に吹き飛んでいた。熱と、快楽と、たまらない愛しさ。それが今のエリアスとサラを動かすものの全てだった。
二人の様子を眺めながら、いかにも満足そうにキノは笑った。
「……うんうん、ここまで来ればあと一息だ」
サラの背中に体を擦りつけながら、キノは二人に囁きかけた。
「あと……ひといき?」
「そうだよ、エリアス。今でも二人の体は溶け合ってしまいそうだけど、まだ先がある。本当に二人が一つになって、もっと気持ちよくなれるんだ」
そう言って、キノはサラを抱き起こした。大きすぎる快感に晒され続けて、サラはの体すっかり脱力してしまっている。
キノはされるがままのサラの脚を左右に開き、彼女の一番大事で、一番敏感な部分を、エリアスの目の前に広げる。
ひくひくと切なげに震え、濡れて輝くその部分を、エリアスはうっとしとした瞳で眺めた。
「…やぁ……はずかしいよ……みないで、エリアスぅ……」
「すごい……サラ…きれいだよ、サラのここ……」
「さあ、エリアスのソレの先を、ここに当てるんだ」
言われるがまま、エリアスは自分のモノをサラのアソコにあてがった。空の体の他のどこよりも熱い部分に触れて、エリアスのモノがビクンと脈打つ。
「後はきっと、二人にもわかるはずだよ」
囁いたキノの言葉も、二人にはもう届いていなかった。僅かな接触だけでこれほどまでに強烈に、互いの体の中で燃える炎を感じる事が出来る。
サラと、エリアスと一つになりたい。体中の細胞の一つ一つが、そう叫んでいるのが聞こえるようだ。
自分の内から湧き出る衝動のあまりの激しさに、二人は少し怖気づく。このまま本当に一つになったら、自分たちは一体どうなってしまうのだろう?
「……エリアス」
「サラ……」
サラとエリアスはお互いの顔を見交わした。相手の笑顔を見て、沸きあがってくる愛しさ。二人は改めて、自分自身の沸き立つ心を感じた。
一つになりたい。エリアスと、サラと、一つに溶け合って、お互いの熱を体中で感じたい。
「うん、いくよ……」
こくり、エリアスが深く肯いて挿入を開始する。熱くて狭いサラの柔肉を押し割って、奥へ奥へと進んでいく。
サラの中に入っていく。
「…………っ!!」
破瓜の痛みに震えたサラの体を、エリアスはきゅーっと抱き締めてくれた。やがて痛みは、サラの中を満たした熱に飲み込まれて消えていった。
ゆっくりと、二人は腰を動かし始めた。
「……ああっ!!エリアスっ!!!…私たち…ひとつになってるよぉ!!!」
じゅぷん、じゅぷんと音を立てながら、エリアスの固くて熱いモノがサラの中で前後に動く。
サラの熱にやさしく包まれる感触。自分の中を満たすエリアスの熱の存在感。それだけで、今の二人には神経が焼き切れそうなほどの快感に変わる。
「サラっ!!好きだよっ!!!大好きだよっ!!!!」
「エリアスっ!!!好きぃいいいっ!!!ひぁあああんっ!!!」
快感と熱が、二人を蕩かしていく。大事な部分で繋がり合い、無我夢中でキスを交わし、手足を絡み合わせて、狂熱の中で二人が溶け合っていく。
激しすぎる快感で潤んだ瞳に映るのは、同じように自分を見つめる愛しい相手の顔ばかり。ひたすら貪欲にお互いを求め合って、二人は快楽の沼の中に沈んでいく。
さらに、そんな二人の体をキノは抱き締め、自らの体を思い切り擦りつけた。
「あああっ!!!ボクも…こんなのすごすぎて……ふああああっ!!!」
キノの動きが加わる事で、エリアスとサラの行為は半ば強引に加速されていく。コントロール不能なその動きが、二人をさらに大きな快楽へと導く。
もはや自分たちが何をしているのかもわからなかった。熱くて、愛しくて、それだけで心も体も満たされてしまう。
「ひあっ!?ふあああんっ!!!エリアスっ!!気持ちいいっ!!!気持ちいいよぉおおおおっ!!!!」
「サラっ!!サラの中も熱くてっ…気持ち良くてっ!!!僕はぁあああっ!!!!」
このまま消えてしまってもいいと、本気で思った。このまま高まり続ける熱に身を任せて、どこまでも昇りつめたい、それだけを願った。
「ふあああっ!!!ボク、もうっ!!!ひああああああああんっ!!!!」
耐え切れずに、キノは先に達してしまう。くてんと崩れ落ちた彼女を取り残して、エリアスとサラはさらに激しく交わる。
白熱する行為で、頭の芯が痺れる。体中の神経が、快感以外のものを何一つとして受け付けなくなる。
もっと熱く、もっと気持ちよくなりたい。大好きな人と分かち合うこの快感で、全てを塗りつぶしてしまおう。
ぎゅっと抱き締めあった二人に、快感の津波が容赦なく襲い掛かる。それは二人の意識を最後の一片まで押し流して……
「ああっ!!!いくよっ、サラっ!!!サラぁああああっ!!!」
「エリアスっ!!!エリアスっ!!!エリアスぅうううううううううううっ!!!!」
そしてついに、エリアスとサラは絶頂へと昇りつめた。

夜が明ける。窓の外に覗く空の色が次第に明るさを増していく。微かに聞こえる小鳥のさえずりの中、いつも通りに目を覚ましたキノが、すし詰めのベッドの上に起き上がる。
「……ふあ~、やっぱりまだ眠いや」
そう言いながらもシャツに腕を通し、ズボンを穿いて身支度を整える。カノンを用意して、いつも通りに抜き撃ちの練習を始めようとして、キノは気がついた。
「なんだ、早起きだね。おはよう、エリアス」
「おはよう………別に早起きじゃないけどね。あの後一睡も出来なかっただけで……」
ぽりぽりと頭をかきながら、エリアスが体を起こす。そして眠い目をこすりながら、キノの方に視線を向ける。
服を着て、いつもの格好に戻ったキノの姿は、事実を知った今になっても、エリアスには男の子のように見えてしかたがない。
「……本当に女の子だったなんて、今でも信じられない」
「正直、ちょっとショックだったよ、あそこまで気付いてもらえないなんて。ボクも一応女の子だし、なかなか辛いものがある」
「その上、まさか僕とサラがあんな事になるなんて、思っても見なかった」
「………それは、その……なんというか………ごめん」
それを言われるとキノも辛い。昨夜の記憶が蘇ったキノは、恥ずかしさに頬を染めて下にうつむく。
「でも、とにかく話せて良かった。そう思ってる………」
そんなキノを見ながら、そう言ったエリアスの口調は優しかった。
既に故郷は遠く、これからサラと共に過ごす日々はあまりにも果てしない。何もかもがエリアスの手には負えない、気の遠くなるようなものに感じられる。
だけど、キノと話したことで、エリアスは少しだけわかった。
抱き寄せたサラの小さな肩の感触、あたたかさ、それだけを忘れぬように生きてゆきたい。そう思うことができた。
「それから、まだ言ってなかったから、言っとくよ…………………ありがとう、サラを助けてくれて」
ぎこちない調子でそう付け加えて、エリアスはそっぽを向いた。
「………どういたしまして、エリアス」
微笑んで答えたキノの横顔を、窓から差し込んだ朝日が照らす。新しい一日が始まろうとしていた。




以上でおしまいです。
いや、エリアスとサラはいかにも初々しい少年少女なのが良いですね。
一方であの時のキノさんの容赦ないハンターぶりも凄かったですが。
キノの旅Ⅹ発売からもう随分経過しましたが、あの二人が幸せにしている事を願ってやみません。

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